がん闘病記と日々雑感

がん闘病記と日々雑感

~右往左往の備忘録~

今思えば。病院選び・手術 vs 放射線

私は外科→放射線科へと移った。外科は手術、放射線科は放射線治療を薦めるのは当然で、そこを踏まえてそれぞれの意見を聞き、自分なりに判断しなければならなかった。外科に放射線治療について聞いても良いことを言うはずがない、逆もまたしかり。
 
欧米には「腫瘍科」というのがある。いかにも間口が広そうな、選びやすい科名である。そこは、中立の立場で患者に選択肢を示し、それぞれのメリット・デメリットを説明するという。もちろん、内科・外科・放射線科と連携している。あるべき姿だと思う。
日本でその役割をするのは、がん専門病院の~内科である。←選びづらい...
HPを見ると化学(抗がん剤)しかやっていないように見えるが、外科・放射線科と連携し、患者に選択肢を示すという。考えてみれば抗がん剤は手術にも放射線治療にも使うことが殆どだから、当然かもしれない。
 
私は病院選びの段階でまだガンと確定していなかったため、がん専門病院を選ばなかったが、今思うとダブルブッキングをしておけば良かったと思う。結果を聞いてどちらかをキャンセルすれば良かったのだ。
 
三大治療の手術・放射線・化学療法(抗がん剤)のうち、手術と放射線は根治を見込める治療である。そしてそれぞれ、得手不得手の臓器がある。
 
日本で放射線を選択する割合は僅か25%。アメリカでは66%、イギリスが56%、ドイツが60%である。
なぜか? 日本では胃ガンが多かった。胃ガンは手術の方が有効。よって手術がガン治療の主流となり、他にも広がっていった。その結果、日本の手術の技術は世界一らしい。外科と内科の割合は、8:2。外科は発展し、各臓器名のついた専門の科も増えていった。
 
もし私のケースを「腫瘍科」が提案したら、以下であっただろう。
 
進行性食道癌 扁平上皮癌 胸部下部原発 cT4bN1M0 3C期
原発巣と一塊となった傍食道リンパ節転移があると判断する。
 
治療法の選択肢は2つ。手術+化学か、放射線+化学
 
メリット
手術+化学:根治が見込める。
放射線+化学:根治が見込める。
ここまでは同じ。一旦の治癒率も再発率も同じ。
 
デメリット
手術:体力や痛みからの回復に時間がかかる。ダンピング症状などの重い後遺症があり、一生続く。
放射線:喉の詰まりは完全には消えない。確定的な後遺症はないが、数年後に20%の確率で放射線肺臓炎などが起こる。
 
*化学(抗がん剤)のデメリットはどちらも同じなので省略。
*どちらも、1%未満に起こる致命的な後遺症もあるが、省略。
 
入院日数
手術+化学:60日(延べ)
放射線+化学:1日
 
治療費(差額ベット代は除く)
手術+化学:150万+α
放射線+化学:40万+α
ただし、日本には高額医療費免除があるため、どちらを選んでも患者が支払う金額はほぼ同じ。よって、お得感は手術の方に軍配が上がる(笑
 
再発・転移した場合。(手術・放射線とどちらを受けても、再発率は40%)
手術:放射線+化学療法が使える。再手術もあり。
放射線:同じ場所なら放射線は使えず手術一択。しかも放射線治療後の手術は成功率が比較的低い。
 
もし私が小さい子のいる母だったら。手術を選んだかもしれない。そして私はイヤな奴なので、娘(または息子)に一生、私はあなたのために辛い後遺症を受け入れて手術にした、と言いそう...
だが私は、私のライフスタイルと脳天気な性格から、以下のように考え放射線を選ぶ。
  • 喉の詰まりが完全に消えないのは残念だが、少しは良くなることに期待しよう。
  • 20%の確率の後遺症は起きない。起きたらその時に対処する。
  • 再発は起きないかもしれない。起きても再び放射線が当てられる場所かもしれない。最悪手術になっても、世界一の技術で何とかしてもらおう。
要は辛い事の先送りである。とりあえず先送りしておく。辛い事は起きないかもしれない。起きたとしても、考える時間は稼げる。そうしているうちに新薬や新技術が出てくるかもしれない。 なので先送り作戦は悪くないと思う。
 
社会問題になりつつある医療費については実は思うところあるが、そこは週刊誌各誌・関係各位、がんばってください。(丸投げ
 

追記(2021年7月)

この記事から4年、実際に新薬・新技術は現れた。オプジーボと光免疫療法である。

オプジーボは今や保険適用で出来るし、光免疫療法は定期検査しているがんセンターXで出来るため、もし再発したらこの2つの最強武器で戦います。

辛いことは先送り作戦、結果的に上手くいきました!