今思えば。病院選び・手術 vs 放射線
私は外科→放射線科へと移った。外科は手術、放射線科は放射線治療を薦めるのは当然で、そこを踏まえてそれぞれの意見を聞き、自分なりに判断しなければならなかった。外科に放射線治療について聞いても良いことを言うはずがない、逆もまたしかり。
欧米には「腫瘍科」というのがある。いかにも間口が広そうな、選びやすい科名である。そこは、中立の立場で患者に選択肢を示し、それぞれのメリット・デメリットを説明するという。もちろん、内科・外科・放射線科と連携している。あるべき姿だと思う。
日本でその役割をするのは、がん専門病院の~内科である。←選びづらい...
私は病院選びの段階でまだガンと確定していなかったため、がん専門病院を選ばなかったが、今思うとダブルブッキングをしておけば良かったと思う。結果を聞いてどちらかをキャンセルすれば良かったのだ。
なぜか? 日本では胃ガンが多かった。胃ガンは手術の方が有効。よって手術がガン治療の主流となり、他にも広がっていった。その結果、日本の手術の技術は世界一らしい。外科と内科の割合は、8:2。外科は発展し、各臓器名のついた専門の科も増えていった。
もし私のケースを「腫瘍科」が提案したら、以下であっただろう。
進行性食道癌 扁平上皮癌 胸部下部原発 cT4bN1M0 3C期
原発巣と一塊となった傍食道リンパ節転移があると判断する。
治療法の選択肢は2つ。手術+化学か、放射線+化学
メリット
手術+化学:根治が見込める。
放射線+化学:根治が見込める。
ここまでは同じ。一旦の治癒率も再発率も同じ。
デメリット
手術:体力や痛みからの回復に時間がかかる。ダンピング症状などの重い後遺症があり、一生続く。
*化学(抗がん剤)のデメリットはどちらも同じなので省略。
*どちらも、1%未満に起こる致命的な後遺症もあるが、省略。
入院日数
手術+化学:60日(延べ)
放射線+化学:1日
治療費(差額ベット代は除く)
手術+化学:150万+α
放射線+化学:40万+α
ただし、日本には高額医療費免除があるため、どちらを選んでも患者が支払う金額はほぼ同じ。よって、お得感は手術の方に軍配が上がる(笑
再発・転移した場合。(手術・放射線とどちらを受けても、再発率は40%)
手術:放射線+化学療法が使える。再手術もあり。
もし私が小さい子のいる母だったら。手術を選んだかもしれない。そして私はイヤな奴なので、娘(または息子)に一生、私はあなたのために辛い後遺症を受け入れて手術にした、と言いそう...
だが私は、私のライフスタイルと脳天気な性格から、以下のように考え放射線を選ぶ。
- 喉の詰まりが完全に消えないのは残念だが、少しは良くなることに期待しよう。
- 20%の確率の後遺症は起きない。起きたらその時に対処する。
- 再発は起きないかもしれない。起きても再び放射線が当てられる場所かもしれない。最悪手術になっても、世界一の技術で何とかしてもらおう。
要は辛い事の先送りである。とりあえず先送りしておく。辛い事は起きないかもしれない。起きたとしても、考える時間は稼げる。そうしているうちに新薬や新技術が出てくるかもしれない。 なので先送り作戦は悪くないと思う。
社会問題になりつつある医療費については実は思うところあるが、そこは週刊誌各誌・関係各位、がんばってください。(丸投げ
追記(2021年7月)
この記事から4年、実際に新薬・新技術は現れた。オプジーボと光免疫療法である。
オプジーボは今や保険適用で出来るし、光免疫療法は定期検査しているがんセンターXで出来るため、もし再発したらこの2つの最強武器で戦います。
辛いことは先送り作戦、結果的に上手くいきました!